遺産分割はいつまでにすべき?
― 税務上の期限と注意点を弁護士が解説 ―
増えている遺産分割の問題
遺産分割とは、主に被相続人が遺言書を作成せずに亡くなった場合に、相続人全員で「誰が、どの財産を、どの割合で相続するか」を話し合って決める手続です。
近年、遺産分割をめぐるトラブルは増加傾向にあり、家庭裁判所に持ち込まれる遺産分割事件の件数は、ここ20年で約1.7倍に増えています。
相続人間の関係性や財産内容が複雑化していることもあり、「話し合いがまとまらないまま時間だけが経過してしまう」ケースも少なくありません。
遺産分割に法律上の期限はある?
結論から言うと、遺産分割そのものには法律上の期限はありません。
そのため、いつ遺産分割を行うかは、原則として相続人の自由です。
もっとも、注意が必要なのは、税務上では特定の申告期限が設けられているという点です。
遺産分割を先延ばしにすると、相続税の特例が使えなくなったりして、結果として税負担が大きくなることがあります。
以下では、遺産分割と特に関係の深い税務上の申告期限を時系列でご説明します。
準確定申告|相続開始から4か月以内
準確定申告とは、被相続人が亡くなった年の分の所得税について行う申告です。
相続人は、相続開始を知った日の翌日から4か月以内に準確定申告を行う必要があります。
この時点で遺産分割が終わっていない場合、各相続人は、対象となる財産を法定相続分で取得したものとみなして申告を行います。
そして、原則として相続人全員が連署した準確定申告書を提出する必要があります。
相続税|相続開始から10か月以内
相続税が課税されるケースでは、相続開始から10か月以内に相続税の申告・納税を行わなければなりません。
申告期限までに遺産分割が成立していない場合は、各相続人が法定相続分の割合に従って相続税を計算し、申告・納税することになります。
この場合、未分割の遺産については、
・配偶者の税額軽減
・小規模宅地等の特例
といった、相続税を大きく軽減できる特例が原則として適用できません。
遺産分割が遅れることで、納税額が大きく変わる点には注意が必要です。
「3年以内の分割見込書」と特例の適用
もっとも、相続税申告期限までに遺産分割ができなかった場合でも、申告期限内に「3年以内の分割見込書」を提出していれば、申告期限から3年以内に遺産分割が成立したときに、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例が適用できる場合があります。
遺産分割が成立した後は、4か月以内に更正の請求や修正申告を行うことで、納めすぎた相続税の還付を受けることが可能です。
相続開始から3年10か月を超える場合
相続税申告期限から3年を経過しても遺産分割が完了しない場合、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を受けるためには、税務署の承認が必要となります。
この承認を受けるためには、原則として、
・遺産分割調停や審判
・訴訟の提起
など、法的手続が進行していることが求められます。
まとめ|遺産分割は早めの対応が重要です
このように、遺産分割自体に期限はありませんが、税務上は厳格な期限が数多く存在します。
遺産分割を先延ばしにすることで、思わぬ税負担が生じてしまうこともあります。
相続や遺産分割協議、調停・審判などでお困りのことがありましたら、早い段階で専門家に相談することが重要です。
当職では、状況に応じた適切な進め方をご提案しておりますので、お気軽にご相談ください。